化学・繊維・素材メーカーの動向と業界の注目企業「東レ」

2019年08月05日

■旭化成は主力であるアクリロニトリル(アクリル繊維やABS樹脂の原料)の市況改善により、2019年3月期営業利益は過去最高を更新する見通し。
リチウムイオン電池向けの絶縁材の出荷数量も増加している。

■住友化学の19年3月期業績は、石油化学事業を中心にナフサ価格上昇で商品の販売価格も上昇。
この影響で売上収益は2ケタ増収が見込まれる。
一方、医薬品事業、農薬事業は収益悪化となる見通しで、全体としてもコア営業利益の減益を見込んでいる。

■信越化学工業は半導体製造に不可欠なシリコンウエハーで世界30%強のシェアを有している。
300mmウエハーを中心とした値上げ効果の浸透により、19年3月期営業利益は9期連続で増益となる見込み。

■三井化学は国内屈指の総合化学メーカー。自動車向け樹脂の販売拡大による持続的な成長が期待されている。

■三菱ケミカルホールディングスは国内総合化学の最大手。
食品包装フィルムやリチウムイオン2次電池向け部材、自動車向け高機能樹脂といった高付加価値の機能商品が伸びている。

■富士フィルムホールディングスは医療機器・医薬品・複写機などを展開している。
19年3月期は複写機事業で構造改革が進んだことにより、大幅な営業増益が見込まれる。

■帝人は高機能繊維・化成品・複合成形材料、医薬・在宅医療、ITなどの事業をグローバルに展開している。
19年3月期はタイヤの補強材や光ファイバーに利用されるアラミド繊維の販売が、光ファイバー向けで伸びるなどして増収を見込むものの、自動車向け樹脂で原料価格上昇に伴う価格転嫁が遅れ、減益となる見通し。

■新日鐵住金は国内粗鋼トップ。19年4月より社名を日本製鉄に変更した。
19年3月期の会社予想は開示していないものの、鋼材価格の値上げ浸透と出荷数量の増加で、売上高・営業利益ともに1ケタ台後半の伸長が期待できる。
また、19年1月より日新製鋼を完全子会社化している。

■JFEホールディングスは国内粗鋼2位、19年3月期は値上げの浸透で増収となるものの、高炉の操業トラブルが相次ぎ減益となる見通し。
高炉の安定操業・安定生産体制の確立が課題。

10月から、約4年ぶりに壁紙の全商品の卸売価格を15~20%引き上げる計画である。
橋本総業ホールディングスは2ケタ増益を達成。パイプや継手など管材類の好調が業績をけん引したが、衛生陶器や住宅設備機器も順調に伸びた。ジューテックホールディングス、OCHIホールディングス、高島は住宅着工が伸び悩む中で横ばいの業績となっている。

■王子ホールディングスは国内製紙トップ。パルプ事業では紙の原料となるパルプの製造・販売を行っているが、19年3月期はパルプ価格の上昇により同事業が大幅増益となり、グループ営業利益の拡大をけん引する見込み。
ペーパーレス化に伴い国内における紙需要は減少が続いているものの、海外で事業を積極展開し、直近では海外売上高比率は30%近くまで上昇、従業員数も海外拠点が国内を上回るほどになっている。
海外での成長が期待される。

■日本製紙は国内製紙2位。国内外に広大な森林を有しており、これを活かしバイオマス発電などで成長を図る。
15年3月期以降売上高は1兆円、営業利益は200億円前後の推移が続いている。

■AGCはガラスメーカーの最大手。18年7月に旭硝子から社名を変更した。フロート板ガラス、自動車ガラス、ステッパレンズ用石英素材、ETFE樹脂(フッ素樹脂)において世界トップのシェアを有する。
自動車用ガラス、電子部材、化学強化ガラス、超薄板ガラス、クロールアルカリ、フッ素、ライフサイエンス分野で成長を図る。

■日本板硝子は世界最大級のガラスメーカー。グループ売上高に占める割合は、自動車用ガラスが52%、建築用ガラスが40%、高機能ガラスが8%である。
18年11月に新しい経営方針を発表し、「ガラスメーカーからガラス+αの価値創造企業」への変革を掲げている。
2006年に板ガラス世界大手の英ピルキントン社を買収し、その後巨額の財務負担などで16年3月期までは営業損益が赤字に陥ることが多く、不安定な業績推移が続いていたものの、17年3月期以降は黒字基調また増益基調となっている。

■セメント業界は太平洋セメント、住友大阪セメント、宇部興産、三菱マテリアルが業界の4強。
19年3月期の国内セメント需要は前期比1.5%増の4,250万トン程度になったと推定される。
20年3月期は民間需要横ばいも公共事業の拡大などで需要量は19年3月期比1.2%増の4,300万トンレベルが期待される。

化学・繊維・素材メーカー 企業業績

業界の注目企業…東レ

東レの営業利益推移

(出所:決算短信をもとにフィスコ作成)

■3つの基本戦略で持続的な成長を実現している。
1、長期的視点で高付加価値な新技術・新素材を開発。
2、サプライチェーン全体を捉えた事業戦略を推進。
3、グローバル規模で持続的成長を図る。

営業利益は01年3月期512億円、11年3月期1,001億円、18年3月期1,565億円と拡大傾向が続いており、中期経営計画では20年3月期2,500億円を掲げている。

■戦略的拡大事業として炭素繊維複合材料があげられる。
東レは炭素繊維複合材料で航空機用途をはじめとした高品質炭素繊維に加え、コスト競争力のある産業用途向け炭素繊維も含め、圧倒的なトップメーカーとしての地位を確保している。

■炭素繊維は鉄と比較し重さは1/4、強度(引張強度を比重で割った比強度)は10倍、弾性(引張弾性率を比重で割った比弾性率)は7倍、錆びないといった特徴があり、環境負荷軽減のために軽量化が求められる航空機・自動車で利用が拡大している。
炭素繊維需要量は2008年から17年までに約2倍に増加し、今後も年率約10%の拡大が続く見通し

■航空機において燃費改善に直結する軽量化は極めて重要な課題となっている。
軽くて丈夫な炭素繊維は航空機に適しており、航空機メーカーは新機種毎に炭素繊維の使用量を増やしている。
特に今日ANAホールディングスやJALで主力機として運行されているボーイング787では主翼および胴体の全てに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が利用され、機体の重量の約50%が同素材となっている。

東レ 環境負荷低減(出所:東レ)


株式会社FISCO

1995年に設立、2006年上場。金融情報配信会社として、株式、為替、債券、仮想通貨といった金融情報を幅広く取り扱う。各投資市場に対する深い理解と洞察に基づき、初心者からプロまで、投資家を支援する各種金融サービスを提供している。 全国の金融機関約250社向けに金融情報を提供しているほか、個人向けではヤフーファイナンス、LINEニュース、SmartNews、Gunosyなど、国内の主要なサイトやアプリに金融・経済系コンテンツを提供している。

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