米通商政策による影響大きく、今後は新市場創出に向けたコスト増も顕在化

2019年01月18日

18年3月期は総じて順調な業績

国内医療機器市場と生産金額推移

(出所)厚生労働省より

医療機器各社の営業利益推移

国内医療機器の市場、医療機器生産額ともに趨勢は増加傾向を辿っている。
高齢化の進展を背景に、国内市場も今後は安定基調が続くと見込まれるが、より期待されるのは新興国の需要拡大を背景としたグローバル市場である。
国内関連企業にとっても、今後の成長のカギを握るのは、成長する海外需要をいかに取り込んでいくかになるだろう。

日本の医療機器市場においては、カテーテルやペースメーカーなど治療機器が金額ベースで55%、内視鏡やMRIなど診断機器が22%を占め、それ以外は眼科用品や家庭用医療機器となっている(2017年現在)。
市場の平均成長率が高いのも治療機器である。一方、圧倒的なシェアを占める内視鏡をはじめ、MRIや画像診断装置などの診断機器では国内企業の世界シェアが高いが、血管ステントや放射線治療、人工関節などの治療機器では米国系を中心とした海外企業が高いシェアを有している。

国内主力企業の18年3月期業績は総じて堅調に推移した。
増益率が高かった企業を見ると、テルモは日本が微増にとどまったものの、海外各国で売上が約2割の成長となり、収益増加のけん引役となった。分野別では主力の心臓血管カンパニーが大きく伸び、止血デバイス、ハイドロゲルコイル、吸引カテーテル、ステントグラフトなどが好調だった。
日本ライフラインも、心房細動関連製品や人工血管、オープンステントグラフトなど自社製品の販売増が業績のけん引役となったほか、心臓ペースメーカー、胸部用ステントグラフトなど仕入商品も堅調に推移して、前期に続いての大幅増益となった。
シスメックスも2ケタ営業増益を達成。為替の影響もプラスに作用したが、全所在地において現地通貨ベースで増収となった。
映像事業が足を引っ張ったオリンパスに関しても、医療事業や科学事業が揃って増益となり、全社で2ケタ増益を達成した。

19年3月期は円高影響で成長鈍化見通しも保守的か

19年3月期は総じて増益率がやや鈍化するとみる企業が多い。
輸出比率の高い企業が多いため(米国は現地企業が強く、欧州向けのウェイトが高いことも特徴)、為替の円高がマイナスに作用するとみている。
ただ、ドル・円レートで105円を前提とする企業が大半であり、保守的な要素も強いと考えられる。

テルモのカテーテル治療用ガイドワイヤー、オリンパスの内視鏡など、世界でもトップクラスのシェアを有する製品は、今後も新興国での市場拡大の恩恵が安定的に享受できるとみられる。
医療保険制度拡充の効果などが期待される中国でも、これらを手掛ける現地企業はほとんどなく、市場拡大のメリットは大きいと考えられる。
脳血管治療の領域でカテーテル治療の普及が急速に進んでいること、内視鏡手術支援ロボット市場の拡大なども両社にとっては追い風になる。

中期的には、官民挙げての製品開発の動向などが注目される。
17年6月に閣議決定された「未来投資戦略」では、「Society5.0」に向けた戦略分野として、日本発の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化がうたわれている。
産業用ロボットの技術を活用した軟性内視鏡手術ロボット、3Dプリンタ技術により細胞などを積み上げて血管・骨等の生体臓器を作製するシステム、呼吸により動く臓器に放射線を照射する技術を応用した高精度な放射線治療装置、微粒子化した造影剤を用いて転移したがん細胞を検出しやすくするがん転移診断装置などが開発機器の例としてあげられている。
また、米国では製品技術開発を行ったベンチャー企業を買収し、当該製品の量産化を行うことで市場を築き上げている。国内シェアが相対的に低くとどまっている治療器具の分野などでは、こうした動きも必要となってくるだろう。


株式会社FISCO

1995年に設立、2006年上場。金融情報配信会社として、株式、為替、債券、仮想通貨といった金融情報を幅広く取り扱う。各投資市場に対する深い理解と洞察に基づき、初心者からプロまで、投資家を支援する各種金融サービスを提供している。 全国の金融機関約250社向けに金融情報を提供しているほか、個人向けではヤフーファイナンス、LINEニュース、SmartNews、Gunosyなど、国内の主要なサイトやアプリに金融・経済系コンテンツを提供している。

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