電気・電子・半導体メーカーの動向と業界の注目企業「キヤノン」

2019年07月01日

■ソニーは、ゲーム&ネットワークサービス、音楽などコンテンツ事業の利益が伸び、2019年3月期の営業利益は2年連続で過去最高を更新の見通し。
引き続きスマートフォンの画像処理に使う画像センサーやゲームを中心に、持続的な成長が期待される。

■パナソニックは、成長の軸足が車載関連に移ってきている。
ナビゲーションやカメラ映像など、ドライバーに必要な情報を一極集中で分かりやすく表示する大画面液晶ディスプレーや、電気自動車向けのリチウムイオン電池など、車載機器が成長のけん引役。
1月には、トヨタ自動車と車載電池を製造する会社の設立を発表している。

■三菱電機は、FA(工場自動化)、重電、家電など広く展開している。中国景気の落ち込みで主力のFAが苦戦。19年3月期は営業減益を見込んでいる。

■富士通は、軸足をハードからITシステムへ移行している。19年3月期は減収減益の見通しだが、端末事業などの譲渡の影響を除くと、売上収益は横ばい、営業利益は増益の見通し。
企業のIT投資需要は底堅く、事業環境は良好だ。

■東芝は、18年11月に東芝Nextプランを発表し、再生に向けた今後5年間の行程を示した。
今後のあるべき姿について「世界有数のCPSテクノロジー企業」と定めている。
CPSとは、実世界にある多様なデータをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術等を駆使して分析・知識化を行い、そこで創出した情報・価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていくもの(一般社団法人 電子情報技術産業協会より)。

■村田製作所は、積層セラミックコンデンサー(MLCC)世界首位で、需要が爆発的に拡大しており19年3月期の純利益は過去最高を更新の見通し。
MLCCは、電源供給を安定化させ、あらゆる電子機器に使われる。スマートフォンへの搭載、また電装化が進む自動車でも利用が広がっている。
さらに、次世代通信「5G」向けのIoT(モノのインターネット化)機器にも広く使われる見込みだ。

■TDKの19年3月期は大幅増収増益の見通し。自動車の電装化やスマートフォンの高機能化により積層セラミックコンデンサーの需給拡大が追い風となっている。

■セイコーエプソンは、プリンター、プロジェクターを主力とする。
産業用ロボットを扱うロボティクスソリューションズ事業が18年8月以降、中国景気の鈍化による影響を受け、19年3月期営業利益は減少の見通し。
営業利益は16年3月期以降、減少が続いている。

■コニカミノルタは、複写機・光学部品が主力。19年3月期は欧州で複写機また業務用印刷機の販売が伸び、増益の見通しとなっている。
だが、ITの浸透でペーパーレス化が進み、先進国ではオフィス向け複合機の市場が縮小傾向にある。複写機メーカーの環境は厳しい。
17年には、遺伝子分析によるがん診断を手掛ける米アンブリー・ジェネティクスを買収。これをテコに、ヘルスケア分野を複合機に次ぐ収益の柱に育成する狙いだ。

■アルプスアルパインは、スイッチ、センサー、データ通信モジュールなど電子部品を製造販売している。19年3月期は、スマホ向けカメラなどが減速し減益の見込み。

■ルネサスエレクトロニクスは、17年から立て続けに大型の海外買収を決め、攻めの姿勢を続けてきたが、業績がついてきておらず18年12月期は減収減益となった。
2月には開発や総務部門を中心に従業員の約5%にあたる1,000人規模の希望退職を募ることを発表している。

■ファナックは、工作機械の頭脳部分のNC装置(工作機械に対して指令を与える、数値制御装置)で世界50%のシェアを有しトップ、また産業用ロボットでも世界トップ。
NC装置を中心としたFA部門と産業用ロボット部門が売上高の6割以上を占めている。
18年4-12月期は中国でIT関係の一時的需要がなくなったため、スマホ関連のロボマシン部門の業績が大幅に減少したほか、米中貿易摩擦をきっかけとして設備投資需要が減少した。この影響を受け、19年3月期は減収減益の見通し。

■キーエンスの18年3-12月期売上高は前年同期比16%増の4,405億円、営業利益は同14%増の2,403億円となった。
企画開発面での充実、営業面での強化を図り、主力のファクトリーオートメーション(FA)センサーなどが幅広い業界向けに伸びた。

電気電子半導体メーカー 企業業績

業界の注目企業…キヤノン
■キヤノンの主力事業は「オフィス」、「イメージングシステム」、「メディカルシステム」、「産業機器その他」の4つから構成され、17年12月期の売上高構成はオフィス46%、イメージングシステム28%、メディカルシステム11%、産業機器その他18%である。

キヤノンの事業構成(出所:キヤノン資料をもとにフィスコ作成)

■いずれの製品領域においても世界市場で高い競争力を有し、デジタルカメラ、レーザープリンター、FPD(フラットパネルディスプレイ)露光装置では世界1位のシェア、複写機、インクジェットプリンター、半導体露光装置は世界2位のシェアを有す。

■キヤノンの強みは、「多角化」と「グローバル化」によって、製品・地域それぞれにバランスのとれた事業構造を実現している点にある。
1937年に世界一のカメラメーカーを目指して創業し、60年代後半に培った光学技術を武器にカメラ・事務機の多角化戦略を始動させた。
70年代前半には世界初の普通紙複写機、70年代後半には世界最小の小型レーザービームプリンター、80年代には同社が発明したバブルジェット方式によるインクジェットプリンターなど、日本初、世界初となる独自技術を開発して多角化を進めてきた。
グローバル化にも積極的で、50年代後半から世界市場に目を向け、今日では海外売上高比率は78%におよぶまでになっている。

■競争力の源泉の第一は独自技術による差別化にある。近年、研究開発費は年間3,000億円を超える水準で推移し、17年の米国での特許登録件数はIBM、サムスン電子に次いで3位であった。

■キヤノンは日本を代表する優良メーカーであるが、近年業績は伸び悩んでいる。背景としては、オフィス向け複合機市場、またカメラ市場の縮小が挙げられる。
先進国を中心に書類の電子化やペーパーレス化が進み、オフィス向け複合機市場は縮小傾向となっている。また、デジタルカメラ、レンズ交換式カメラを合わせたカメラ市場はデジタルカメラが普及し始めた00年頃から急速に膨らんだが、近年はカメラを搭載したスマホで十分というユーザー意識の変化を受け縮小が続いている。
市場規模は16年には08年の半分程度にまで縮小した。

■この状況に対応するために、キヤノンでは16年~20年の基本方針として「戦略的大転換を果たし、新たなる成長に挑戦する」を掲げ、新規事業の強化拡大を図っている。
新規事業の柱は商業印刷、ネットワークカメラ、メディカル、産業機器の4つである。

キャノン 事業領域(出所:キヤノン)


■商業印刷の領域では、デジタルシフトを背景にデジタル印刷の市場は拡大が見込まれており、新製品を投入し市場の開拓を進めている。
ネットワークカメラの領域はセキュリティ需要やアナログからのデジタル化により成長しており、また用途も、セキュリティ目的からマーケティング分析へと拡大が見込まれる。
キヤノンはこれまで市場の伸びを上回る年平均20%以上の成長を実現している。

■メディカル領域では、画像診断装置が、先進国では先端医療へのニーズにより、新興国では医療インフラの整備により拡大しており、キヤノンではCTやMRI、超音波、X線の各分野でラインアップを大幅に刷新し競争力を高めている。
そして産業機器の領域では、パネルメーカーの要求に十分応える高精細技術の確立、大型テレビへの需要拡大を見据え、大型蒸着装置の開発を促進している。

■これらの施策により、18年には全社売上高に占める新規事業の割合は23%にまで拡大し、今後、中長期的に30%程度まで高めていく方針としている。

キヤノン 売上高と新規事業構成比推移(出所:キヤノン資料をもとにフィスコ作成)


株式会社FISCO

1995年に設立、2006年上場。金融情報配信会社として、株式、為替、債券、仮想通貨といった金融情報を幅広く取り扱う。各投資市場に対する深い理解と洞察に基づき、初心者からプロまで、投資家を支援する各種金融サービスを提供している。 全国の金融機関約250社向けに金融情報を提供しているほか、個人向けではヤフーファイナンス、LINEニュース、SmartNews、Gunosyなど、国内の主要なサイトやアプリに金融・経済系コンテンツを提供している。

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